カンヌライオンズ2017 勝手に総括その3

f:id:vinylunit:20170829190643p:plainカンヌライオンズを勝手に総括しちゃおう企画、第3弾です。今回は「ミッションドリブン」なアイデアについて。

ミッションドリブンなアイデアとはなにか

ミッションドリブンなアイデア。それはすなわち、ブランドとしての使命感を持って、この課題を解決することで世界は幸せになるか?と自ら問い、その問いに答えたアイデアになっているということ。電通CDC局長 古川裕也さんの著書から引用します。

ミッションは、「自分たちができることの中でいちばん高度で本質的で世界のためになることは何か」という問いに対する答えでもある。

「すべての仕事はクリエイティブディレクションである。 / 古川裕也 著」より引用

今回のカンヌライオンズに関して、各所で発表されているセミナーレポートを読んでいても、ブランドミッションに対する重要性について語られることが多かった印象を受けました。この傾向はますます強くなっていくと個人的には思っています。ソーシャルグッドの波が一段落し、ブランドが社会との接点を見直す時に、ブランドとしての存在意義に立ち返る傾向が強まっているんだと思います。逆に生活者の目もそれだけ厳しくなっている、ということの裏返しでもあるのですが。ちなみに、前回も書きましたが、シリコンバレーのスタートアップもミッションドリブンな傾向にあるようです。再び古川さんの著書から引用です。

スタートアップに関わるシリコンバレーの人々の間で近年、「ミッション・ドリブン」という言い方が支持されているという。…(中略)…“ミッションに張る”のだ。これから、これが来そう、とか、これが確実に儲かりそう、とか、この辺が空いている、とかではなく、世界にとって重要なミッションをいちばんのコアに置いて起業するのである。

「すべての仕事はクリエイティブディレクションである。 / 古川裕也 著」より引用

ミッションドリブンなアイデアに言及したセミナー

DIAGEOセミナー「THE PATH TO PURPOSE(社会的意義への道)」

ギネスやスミノフなどを販売するディアジオ社のセミナー。社会の一員として、ブランドが貢献できることはなにか。社会をより良くするために取り組めることはなにか。そのための視点を紹介しながら、自社の取り組みを紹介。 

R/GAセミナー「DISRUPTION BY DESIGN」

クリエイティブエージェンシーR/GAはセミナー内で、Disruptor(破壊者)へと変革するための6つのキーポイントを紹介。「PURPOSE -START WITH A BRAND PURPOSE(消費者をインスパイアするブランドの存在意義から始めよ)」「INNOVATION - CREATE VALUE WITH INNOVATION(その存在意義を生活者に届けるためにイノベーションが必要である)」といった内容が語られている。

ほんの一例をご紹介しましたが、他にもブランドミッション、存在意義について言及したセミナーが多数ありました。

カンヌライオンズで見つけたミッションドリブンなアイデア

さて、ここからは具体的な事例をみていきたいと思います。

THE DNA JOURNY (PR GOLD / Film Silver)

Momondoという格安航空チケット検索サイトが実施したキャンペーン。日本ではSkyscannerのほうが有名でしょうか。格安航空チケット検索サービスによって、生活者は従来よりも手軽に世界中を移動できるようになりました。ムービーが素晴らしい出来栄えなので、まずはご覧ください。

映像は、自分の祖国や故郷について語ってもらうインタビューからスタート。各々が自分のルーツに自信とプライドを持っており、他の国や文化に対して排他的な意見を述べたりします。しかし、唾液を使ったDNA調査をしてみると、衝撃の結果が判明します。DNA検査を使って祖先に遡ると、多くの国や文化が自分のDNAに刻まれていることが分かり、被験者たちは驚愕する、という内容です。 

筆者が見立てたこのプロジェクトのミッションは「(MOMONDOの提供するサービスで)心が開く手助けをし、開かれた世界をつくる」ということ。2016年は難民問題やブレグジットをはじめ、国家や民族、宗教間の対立や溝が深まった世界に対する、ブランドとしての姿勢の表明だと思います。

コアアイデアは「人は自分が思っているよりも、多くのものを世界と分かち合っている」。そのためのアウトプットアイデアは「DNA検査で自分のルーツを探り知る」ですね。締めのコピー「An Open World Begins With An Open Ming(開かれた世界は、開かれた心からはじまる)」に、このプロジェクトで伝えたかったことの全てが集約されているように思います。

CLIENT: Momondo(格安航空チケット検索サイト)

BRAND MISSION: 格安で航空チケットを提供することで、人々が気軽に自由に世界を行き来できる、フラットな世界を作る

CORE IDEA: 人は自分が思っているよりも多くのことを、世界と分かち合っている

OUTPUT IDEA: DNA検査で自分のルーツを知り、驚嘆する様子をおさめたドキュメンタリーフィルム

SAVLON HEALTHY HANDS CHALK STICKS(OUTDOOR GOLD / PR GOLD)

インド人は手で食事をするのにも関わらず、農村部ではハンドソープを使う習慣が付いていません。そのため、手の不衛生のために子供たちが病気にかかり、亡くなってしまうという課題を抱えています。そんな課題を解決するアイデアが「ハンドソープ入りのチョーク」です。こうした農村部では、まだまだ黒板+チョークを使って授業や勉強を行っているそうで、チョークは子供たちにとって欠かせないツール。そんな習慣的に利用しているモノに着目したアイデアとなっています。この取り組みはインド全土に広がっていったとのこと。

ブランドミッションは「手の衛生環境を守ることで、世界中の人々を病気から守る」、ハンドソープブランドとして世界を良くするミッション設定だと思います。コアアイデアは「(ハンドソープの利用習慣化を促すために)毎日使うものをハンドソープに変える」です。利用習慣化というアクティベーションを促すアイデアとして非常に優れていると思います。ターゲットが子供なので、なるべく普段使うものに着目をしたのでしょう。そして、アウトプットアイデアは「ハンドソープ入りのチョークを開発、学校に配布する」です。最後に簡易的にまとめておきます。

CLIENT:SAVLON(ハンドソープブランド)

BRAND MISSION:ハンドソープによって、手の衛生環境を向上させ、世界中の人たちを病気から守る

CORE IDEA:(ハンドソープの利用習慣化を促すために)毎日使うものをハンドソープに変える

OUTPUT IDEA:ハンドソープ入りのチョークを開発、学校に配布する

ブランドミッションを意識して企業課題に取り組む

自戒の意味も込めて、プロダクトの機能ベネフィットや情緒ベネフィットを発想の起点にするのではなく、ブランドが本当に果たすべきミッションに頭を巡らせないと、こうしたアイデアは出てきません。アイデアを考える際の、思考のレイヤーを1つ上げる意識を持てるかどうかにかかっているのかなと。来年以降も必ずこの傾向は続くと思いますし、日本でもこうした事例が出てくることになると思います。

ということで長くなりましたが、「ミッションドリブンなアイデア」についてでした。最後まで読んで頂きありがとうございました。