カンヌライオンズ2017 勝手に総括その2

f:id:vinylunit:20170826232356p:plain

カンヌライオンズを勝手に総括しちゃおう企画、第2弾です。今回は個人的に気になるトピックスについて書いていこうと思います。

気になるトピックス「SOCIAL CAUSE」

ソーシャルグッドが叫ばれて以降、近年ずーっと続く傾向にあるとは思うんですが、特に今年は多かったと言われています。2016年について世界情勢をみてみると、トランプ政権の誕生、ブレグジット、難民問題、テロの多発…など、激動の一年でした。社会が大きく動いた一年を象徴するかのように、社会問題に立ち向かう事例が多く見られました。特に欧米系の仕事にこの傾向が強く出ていたと思います。

大きくキーワードを3つ挙げると、

Gender Equality(男女平等)

Refugee(難民)

Diversity(多様性)

です。

それぞれについて、印象的だった事例を見ていきたいと思います。 

Gender Equality(男女平等)

THE FAMILY WAY(Mobile Grand Prix)

日本で実施された妊活に関するお仕事。「不妊の原因は自分にある」と感じる女性が多く、女性の治療ばかりが先行している現状があります。男性側に不妊の要因があるケースが多いのにも関わらず、男性が主体的に妊活に取り組むことは日本ではまだまだ浸透していません。時間的/心理的ハードルの高さがその要因のひとつと言われています。

そこで、リクルートライフスタイルは、自宅で手軽に自分の精子の状態を知ることができるセルフチェックツールを開発しました。精液を採取しキットにセット、それをスマホのカメラで読み取ることで、自分の精子の状態(濃度や運動率など)を確認することが出来るツールになっています。このツールは、amazonなどで販売されています。 

Fearless Girl(PR/Outdoor/Glass Lion Grand Prix)

前回もご紹介しましたが、男性社会である金融業界の現状に一石を投じた仕事。出世や成功の象徴であるチャージング・ブル(ウォールストリートに設置されている銅像)の目の前に、この牛に向かって立ち向かう“恐れを知らない少女”という名の銅像を設置し、社会に大きな議論を巻き起こしました。この銅像そのものが、女性たちをエンカレッジするパワーを持っています。

Refugee(難民)

The Refugee Nation(Grand Prix for Good)

2016年のリオ・オリンピックに出場した「難民選手団」を支援するキャンペーン。オリンピックでは国旗を掲げるシーンをよく見ますが、彼らには国旗がありません。そこで、難民を象徴する“ライフジャケット”を活用し、結束の意味をこめた彼らのために国旗をデザインしました。この国旗がオリンピックという世界中の注目を集める場で掲げられることで、難民たちのサポートを訴えることにも繋がる仕組みです。この仕事は世界中から賞賛の声を集め、ONE SHOWでも最高賞を受賞するなどしています。また、MoMAにも展示されるようです。

Diversity(多様性)

Los Santos Pride(Innovation Gold / Entertainment Bronze)


Los Santos Pride – Case Study

グランド・セフト・オートという、世界中で人気のゲームがあります。かなり暴力描写の激しいゲームとして有名です。この仕事のアイデアは「この暴力的な世界の中でプライドパレードをやろう(なぜなら、この暴力的なゲームの世界には愛が必要だから)」というもの。

僕もあまり詳しくはないのですが、ゲームの世界にはMOD文化というものがあって、ゲームのデータを改変して再配布するカルチャーがあるそうです。マップやアイテムが追加されたり、バグが修正されたり。今回はこのMODを活用し、ゲームの世界でプライドパレードができるデータをフリーダウンロード出来るようにしています。オリジナルTシャツやフェイスペイント、プラカードなどがオリジナルアイテムとして追加されたようです。

この取り組みは瞬く間に世界中で話題になり、各種メディアで取り上げられたり、SNSで爆発的に拡散したとのこと。ケースビデオも良く出来ていて見応えがありますね。 

気になるトピックス「高いレベルでのイシュー設定」

これはもう毎年感じることなんですが、海外事例はイシューの設定がとにかく高い。日本よりも2〜3つくらい高く設定されていると感じます。クライアントと腹を割って会話し、覚悟を持った仕事に昇華できているんだろうなと思います。

ざっと事例をみてみると、

Fearless Girl (PR/Outdoor/Glass Lion Grand Prix)

Issue:女性の地位向上

Client:投資会社 

Boost Your Voice (Promo And Activation/Integrated Grand Prix)

Issue:投票格差の是正

Client:携帯キャリア

THE UNUSUAL FOOTBALL FIELD (Design Grand Prix)

Issue:低所得エリアの青少年犯罪率低下

Client:不動産デベロッパー

 日本では、貧困やスラム問題といった一種の“切迫した社会問題”は少ないという背景があるのかもしれません。しかし、こうした社会問題と向き合っていくことが、今後ブランドが生き残っていくための重要なポイントになると感じています。これは次回書こうと思っていますが、イシュードリブン、ミッションドリブンといった考え方です。「この課題を解決することで世界は幸せになるか?」「そのブランドは世界をどう幸せにしているのか?」そんなことがブランドに問われている時代が来ています。シリコンバレーのスタートアップも、こうしたミッションドリブンな考え方がスタンダードになりつつあるそうです。カンヌで評価される、といったアワードの話ではなく、ブランドの存続における大切な視点になっていくことと思います。

ということで、次回は「ミッションドリブンなアイデア」について書こうと思います。最後まで読んで頂きありがとうございました。