カンヌライオンズ2017 勝手に総括 その1〜注目作振り返りレビュー編〜

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今年もカンヌライオンズ行けませんでした。が、日本でPCにかじりついて動向をウォッチしておりました。あの1週間はあんまり仕事してなかったなあ。もうカンヌが閉幕して2ヶ月ほど経ってしまってますが、自分の頭の整理の意味もこめて、個人的な総括を勝手にしたいと思います。あくまで一個人の考察として読んで頂ければなと。あ、長くなると思うので、いちおう数回に分けます。まず第1回目は注目作紹介から。既に各所で紹介されまくってますが、いくつか振り返りたいと思います。ここで紹介できないものについては、またどこかでバーっと紹介ページを作りますね。

カンヌライオンズ2017 注目作の振り返りレビュー

Fearless Girl(PR/Outdoor/Glass Lion Grand Prix)

投資信託の企業が実施したキャンペーン。女性の不平等を訴える銅像を、ウォールストリートの象徴である“Charging Bull”という牛の像の目の前に、立ち向かうかのようなポーズをとった形で設置しました。金融業界は女性の役員登用の遅れや給与格差といった課題が指摘されており、牛をこの旧態依然とした業界構造の象徴、そしてその前に立ちはだかる少女が“女性の地位向上”という強いメッセージを伝えています。メディア、SNSで大きな話題となり情報が拡散されただけでなく、NYの新名所として観光客が殺到。さらに、1ヶ月限定での設置予定が、署名が集まったため延長されるなど、各所で議論を巻き起こしています。このイシュー設定の大きさと、世の中に与えたインパクトの大きさを評価する声が多いようです。また、アートとしてのクラフト力の高さもポイントのひとつと思います。もしこの銅像のクラフトとしての力が弱ければ、ここまで大きな話題を生み出せていなかったんじゃないでしょうかね。

WEʻRE THE SUPERHUMANS(Film Grand Prix)

イギリスの公共テレビ局チャンネル4がリオのパラリンピックに合わせて放映したCM。知っている人も多いかもしれませんが、これは前作(2012年)の高い評価を引き継いで制作されたもの。2012年はロンドンでのパラリンピックをPRするCMを「Meet the Superhumans」をテーマに制作、世界中で高い評価を得ました。クリエイティビティの力で、障害者に対するパーセプションチェンジを起こしただけでなく、パラリンピックの来場記録が数倍になるなどアクティベーションをも引き起こした仕事です。2016年に制作された本作はさらにパワーアップ。「Yes I Can」というアップテンポナンバーに合わせて、人間離れした技を次々と披露していく内容に仕上がっています。

Boost Your Voice(Promo And Activation/Integrated Grand Prix)

アメリカでは投票所が減ったために、長時間並ばなければ投票できないエリアがあるという課題を抱えています。しかも、マイノリティや貧困層が多く住むエリアに起こっているという状況。投票のために7時間も並ばなければならない…。これはすなわち投票率の低下に直結します。

この課題に立ち向かったのが、Boost Mobileという携帯会社。「Boost Your Voice」と銘打ったキャンペーンを展開し、自社の携帯ショップを臨時の投票所として登録したり、告知ポスターを配ったり、様々なイベントを実施したり。投票を促すアプリも作っていますね。この施策によって、23%も投票率が上がったそうです。

THE UNUSUAL FOOTBALL FIELD(Design Grand Prix)

タイの人口過密エリアは低所得の人が多く、遊び場も少ないため非行に走ってしまう課題を抱えているそうです。そんな現状を打破しようと動いたのが、タイの大手不動産デベロッパーのAP社。過密エリアに点在する歪な形の隙間スペースを、長方形でないサッカーフィールドにどんどんリデザインして、子供たちがストレスを発散できる遊び場にした、という仕事。サッカーフィールドは長方形のキレイな形じゃなきゃならない、という凝り固まった概念をぶっ壊してくれ、個人的にハッとさせられました。子供の頃に、家の近くの空き地や公園を、勝手にフィールドに見立ててサッカーをした人も多いハズ。真に社会課題を解決するイノベーティブな仕事ですね。アドフェスト2017のデザイン・ロータス部門でもグランプリを獲得しています。

THE HUMANIUM METAL INITIATIVE(Innovation Grand Prix)

違法な武器を溶かしてHumaniumという金属と、それを取り巻くサスティナブルなビジネスモデルを作ったお仕事。その一連のフローを簡単に説明すると、違法な武器を集める→それを溶かしてHumaniumという金属をつくる→この活動に賛同する企業に販売する(企業からすると、この活動に賛同しているという事実がブランディングにつながる)→その利益でまた違法な武器を集める→…、というよく考えられた仕組みになっています。

世界では違法な武器による犯罪が多発しており、年間50万人以上が亡くなっている大きな課題。しかも、違法な武器は回収してもその処分にコストがかかり、政府としてもその対応に困っていた、という背景があったそう。この取り組みは既に、中南米で実施されているそうです。

イノベーションというとテクノロジーによる革新を想起しがちですが、今回のようなビジネスモデルの革新も、このように評価されるべきですよね。ちなみに現地入りしていた友人によると、「この仕事は素晴らしいがイノベーション部門でグランプリを獲るべきではない」といった意見もあったとのこと。不可逆的なものこそがカンヌのイノベーション部門で評価されるべきだ、という視点からの指摘だったそうです。

 振り返りレビューここまでです…

まずはサクッと注目作の振り返りレビューを…と軽い気持ちで考えてましたが、かなりお腹いっぱいです。スミマセン。実はここで紹介した以外にも「MEET GRAHAM」「THE REFUGEE NATION」など世界を動かした素晴らしい仕事をご紹介したかったのですが、それはまた別の機会に。

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